「つくる、あそぶ、つながる」をテーマに、自分らしく暮らす人々のライフスタイルを紹介するコラム企画。今回は、ぬいぐるみ作家サリークシーとして活動しているやまがたさんのお家にうかがいました。三女よはくちゃんの愛くるしくも険しい表情にファンも急増中。三姉妹と三匹の猫に囲まれた暮らしは、まるで毎日がドラマのようで……。
昨日と今日の違いがない日々
その暮らしを誰かが見てくれたから
世の中とつながった
よはくちゃんって本名なんですか?
ゆりかさん
「生まれたばかりころに、お姉ちゃんたちがつけたあだ名なんです。『顔によはくが多いから』って(笑)。けっして悪い言葉とは思っていません。子育てをしていても、よはくがあるってすごく大事。生活の余裕だったり、変化する余地だったり。私が大切にしたいことが、ぴたりとはまったように感じました」
よはくちゃん、Instagramでも大人気ですよね。
ゆりかさん
「温かいコメントにいつも励まされています。Instagramをはじめたのは10年以上も前で……。長女が生まれた1ヶ月後に東日本大震災が発生して。オムツが手に入りにくく、夜も電気が消えちゃうような状況が続きました。ずっと子どもと2人きり。毎日が同じことの繰り返し。なんだか宇宙に漂っているような気分で『ちゃんとしないと!』と思いながら、だんだんお部屋も荒れてしまって。そんなとき、Instagramをはじめたんです」
いまの丁寧な暮らしぶりからは想像できません。
ゆりかさん
「誰かの朝ごはんの写真を見て『みんな生活してるんだ』と感じて。私も投稿するなら、もっと丁寧に、毎日を大事にしようと思えたんです。投稿を通じて長女と同い年ぐらいのお子さんがいらっしゃる方とも仲良くなれました。『大変だよね』って言い合うことで、社会とつながった気がしたんです。(みんな子育てをがんばっているんだ)って、やる気が出てきました」
やりたいって気持ちが眠っていた
母が買ってくれなかったミシン
手づくりしたら喜んでもらえた
かわいらしいミシン部屋ですね。
ゆりかさん
「じつは子どものころからミシンが欲しかったんですが、私の母が買ってくれなくって。長女の子育てが落ち着き、時間に余裕が出てきたころにお洋服づくりからはじめました。娘たちが、すごく喜んで着てくれるのが嬉しくって。ティッシュケースやカーテンなど、いろんなものをつくりました。今日、よはくちゃんが着ている花柄のワンピースも私がつくったものなんですよ」
これも手づくりだったとは!
ゆりかさん
「10年もののワンピースもあります。長女のときにつくったもので、次女が着た後でお友だちに譲って。ずっと大事にしてくれていたようで、よはくちゃんが生まれてから、我が家に帰ってきたんです」
2つとなりの駅「サリークシー」から来た
かわいらしいクマちゃん
名前も性別もまだ決まっていません
ぬいぐるみづくりはいつ頃はじめたんですか?
ゆりかさん
「2015年ぐらい、最初はマフラーをつくろうと思っていたんですよ(笑)。そのために買った生地が、まったくマフラーに適していないことが分かって。しかたなく、ぬいぐるみをつくってみたんです。それをInstagramに載せたら『欲しい!』と言ってくださる方がたくさんいらっしゃって」
「サリークシー」とはどんな意味なのでしょう?
ゆりかさん
「はじめてつくった、いびつなぬいぐるみを長女がかわいがってくれて『この子は、2つとなりの駅から来たんだよ』って教えてくれたんです。徒歩だとちょっと遠いけど、電車だったらすぐ行ける、そんなまちの名前が『サリークシー』でした。すごく想像力が豊かな子なんですよ。『サリークシー』には、お友だちがいっぱい住んでいるんだって。だから、私もぬいぐるみをいっぱいつくることにしました」
かわいらしいクマちゃんです。
よはくちゃん
「クマちゃんじゃない。スズギトなの」
スズギト?
ゆりかさん
「スズギトは種族名みたいなものです。それぞれがお家に迎えられて、新しい名前を付けてもらうまで、みんなスズギト。そのときに着せてもらうお洋服によって性別も変わります。そういった事情は長女が教えてくれました」
なるほど。クマちゃんではなかったんですね。
たくさん悩んだ末に家族が増えた
何が正解かは分からないけど
未来にはきっとつながる
お家にはスズギトだけじゃなく猫ちゃんもいっぱいいますね。
ゆりかさん
「いつもビックリした顔をしているのがコモンくん。夫を除けば唯一の男なのですが、本当にびびりで。ベランダに見知らぬ猫が来ても、すぐにお腹を出して降参するんです。戦いに出るのはいつも女性陣。とくに今日は顔を見せていないトコちゃんは、もともと野良だったので強いんですよ」
トコちゃんが来たのは妊娠中だったんですよね?
ゆりかさん
「ちょうど、よはくちゃんが私のお腹のなかにいた冬のことでした。大雪がふるとても寒い日、カーテンの向こう側からコンコンと音が聞こえて。窓を開けたら、子猫を引き連れたトコちゃんが家に入ってきたんです」
とても賢い子なんですね。
ゆりかさん
「はい。我が家でくつろぎはじめました。紆余曲折あり、このまま放っておくわけにもいかないから、トコちゃんを病院に連れていったんです。そうしたら妊娠しているのが分かって……」
なんとビックリ!
ゆりかさん
「お医者さんに『堕胎させますか?』と言われて。そんな大事なこと、私が決められる訳ないじゃないですか。でも、外で産ませると危険だから、我が家の1階で産んでもらうことに決めたんです。先住猫のコモンくんとピピちゃんには2階で暮らしてもらうことになりました」
すでに2匹と暮らしていたんですよね。
ゆりかさん
「そうです。トコちゃんが連れていた子猫は私の妹と暮らすことになり、新しく生まれた子猫たちにも優しい里親がみつかったのですが……。大きなトコちゃんの貰い手を探すのは、やはりむずかしい。娘たちが『トコちゃんは家族だよ』と言うこともあり、そのまま一緒に暮らすことになりました」
ゆりかさんも妊娠中のなかで本当に大変な決断でしたね。
ゆりかさん
「三匹が仲良くなるまで時間がかかりましたが、トコちゃんにパンチされながらも、果敢にコモンくんが近づいていって。いまでは良いお姉さんになっています」
そこでコモンくんが活躍したんですね。命のつがなりを感じるステキなエピソードありがとうございました!